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zoom RSS 歌麿大作「深川の雪」と「吉原の花」−138年ぶりの夢の再会−(岡田美術館)

<<   作成日時 : 2017/08/05 12:54   >>

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 「発見」された歌麿の大作肉筆画「深川の雪」には姉妹作があり、それぞれ「品川の月」、「吉原の花」と題され、今はそれぞれアメリカの美術館所蔵となっている。この三つを並べて展示することは「深川の雪」を得て以来岡田美術館側の悲願であったという。幾多の苦難を乗り越えて、このたびようやくその思いが(ひとつは複製画だが)遂げられる。

喜多川歌麿
「吉原の花」 江戸時代 寛政3〜4年(1791〜92)頃 ワズワース・アセーニアム美術館蔵
 三作の中央に置かれるその名の通り華やかな作品。アメリカの美術館所蔵だからだろうか、巻物でなく開かれて額に入れられてる。桜の花の咲く頃、吉原のとあるお店での夢のような宴のひと時。

 標題となっているいる花=桜の木は現在の我々が見るソメイヨシノみたいな豊満な感じではない。この頃は山桜しかなかったのかな。でもそれを補ってあまるほど艷やかなお嬢様方。

 感動のご対面ではあるが正直ごちゃごちゃしすぎ。全体のバランスは「深川の雪」の方がいいような気がする。制作年順は「月」「花」「雪」とのこと。

 吉原・深川、いずれも二階建ての遊郭屋敷を描いている。「吉原の花」は中学生の描いた製図の様に遠近法はぎこちないけれども、写真のない時代に自分が見たものをどう2Dで再現するか当時の人は相当苦労したのではないかと偲ばれる。

 「深川の雪」はその後遠近法をものにしたというよりもそれを凌駕(放棄?)している。二階建ての建物らしいが細かいことはどうでもいいじゃねーかくらいのエッシャーばりの不可思議空間を独自の解釈で演出している。

 「吉原の花」での絵師の腕の見せどころとして、の一階の緑色のすだれと二階の障子の背後にいる女性の姿を描くのはかなり高度な技術と手間を必要としたことだろう。

 特に、よく見れば簾の向こうに透ける女性の目に横串が掛からないようにしている。目線になっちゃうとせっかくの美人さんが台無しだもんね。この辺はあらかじめかなり計算をしないと出来ないことだ。

 二階の障子から見える姿については、板ガラスなんかあの頃なかっただろうからあの隙間は何もハメられず紙が貼ってなかった状態と思っていいのだろう。その分暗くして陰を表現している。

 ぽけ〜と眺めていると色々不思議なことにも気付く。絵の中の人物がどれも興味深い。

 まず二階の左の部屋に掛けられている絵で、あの大きな白い袋に包まれているサンタクロースみたいなおじさんは一体何者だろうか。恵比寿さん的なものなのか?

 またなんでいつも遊廓に子供がいるんだろう。更に不思議なのは女の子なのに男の子の格好をしているように見える。あるいは男の子に女の子の着物を着せているのか。(これは三作を通してのこと)

 真ん中で赤ちゃんを抱いている女性の着ている着物に付いた家紋は、まるで原子力マークにしか見えなかった。

 こんなのね
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 会場外にあった解説展示の解説によれば、これは栃木の豪商善野家「九枚笹」の家紋だったのに後年塗りつぶされてしまったということらしい。誰が何のために? 残しておいてはまずいしるしだったんだろうか。

 浮世絵の頃の絵の人物の顔はほとんど区別できないくらい似ているのだが、二階右上コーナーと左下コーナーにいる女性二人はそっくりで共に周りとすぐに区別が付くおかめ顔をしている。おかめなふたごになにか狙いがあるんだろうか。

 おかめは日本古来の美人顔と聞いた気もするが、花魁の絵でおかめ顔したのなんざ見たことはないので、江戸の頃はもう現代の我々と同じユーモラスな感覚で見られていたのでは。美人さんたちの引き立て役なんだろうか。

 ユーモラスと言えば、左下に見られる鳳凰の柄の着物(若冲でもお馴染みラブラブビーム❤)コスチュームで固めたダンサーズ(?)が左奥から歩いてくるのだが、その中に正面を向いた女性の顔を発見した。

 この時代の人物画としてとても珍しい気がする(そしてあんまりかわいくないw)。この女の人だけかなと思っていたら二階にもいたよ。って、簾の奥に隠れた中にまだもう一人いたよ。まだいるのかも。こうなったらウォーリーを探せ状態であるw。

 ちなみに後で図版を見て知った「ねずみを手に乗せている女性」には気付かなかった。会場で探してみよう!

 そしてこの日ふと気付いたのが(これも三作を通してのこと)、遊郭なのにもてなされる側の男の姿が家の中にひとりもいない(こどもは除く)。それは見ているあなたがもてなされているからだよ、みたいなオチかな。


「品川の月」
 こちらの作品は現在の所蔵主であるアメリカのフリーア美術館が貸出を認めず(いかなる作品も出さないポリシーらしい)原寸大の精密複写だそうだ。特に違和感はない。

 月の掛かる夜の海を背景としたなかなか素敵な構図なのだが、若描きだろうか、他の二作品に比べるとかなりスカスカである。

 見ていて気付く工夫は、いろんなものを遮って描いていること。絵の中の絵や書はとてもしっかり描かれていて、左の衝立の署名なんてちゃんと斜から見た縦長の文字になってて芸も細かい。でもせっかくのその見事な衝立の絵も見事に柱で分断されている。

 中央に立つ主役級の一番綺麗なお姉さんのお尻からしっぽのように何が突き出しているのかと思ったらどうやら三味線の柄だったようだw。

 画面左端には障子越しに男の影が見える。思わせぶりなほのめかしの演出こそ歌麿の得意とするところであった。

 そもそも、標題になっているお月さまがどこにあるのか最初わからなかった。ようやく右上の空に見つけたがあまり目立っているとは言えない。絵の中でも誰も注目していないのだ。

 紺色の着物を着てかがんだ女の人が外を向いているので、月をひとりで愛でているのかなと思ったがどうやら彼女は離れの別の女の人とお話をしているようだ。主役なのにこの控えめな登場のさせ方はやはり江戸の粋なんでしょうかね。

 ところで、左下で手紙をしたためている女を後ろから覗き見ている別の女が舌を出している。これはどういう意味なんだろう。別れ話をざまあみろと笑っているのかな。服装や髪型アクセサリーなどからどうも身分は下女っぽいんだけど。ヨーロッパ絵画の道化の雰囲気だな。シャガールなんかでもこんなキャラがいる気がする。



 同時開催されている別の企画展。「人物表現の広がり−土偶・埴輪から近現代の美人画まで−」も興味深かった。岡田美術館は広くて全部回るの大変だけど、見逃してはいけませんぞ。

葛飾北斎
「四季耕作図」
 北斎、こんな絵も描いてたのか。まだまだびっくりさせられるよ。かのジョサイア・コンドルコレクションらしい。時空を越えた農村米作り風景なのだ。右から左に年間の時系列を並べていく工夫はよくあるけれど雲で間を取って縦横に配置するのは初めて見たかも。

「立美人図」
 北斎の美人画はいささか色っぽさが足りないのだけれども、これ以上ない正確な顔各部の配置が震えるほど正確に決まっている。このレベルにあるのはピカソぐらいしか私は知らない。 ブラシみたいなチリチリ前髪の表現も空前絶後。あの緑の笹紅もしている。この辺は応為さんが手伝ったものかもしれないが。

「傾城図」
 美人画。足を高々と上げて闊歩する花魁さんの体の躍動とツンと澄ました顔の対比は、あの波と富士山の絵と同じモチーフである。オーダイナミック!


河鍋暁斎
「美人愛猫図」
 北斎の隣に飾られていたが、この人もうまいな…。猫ちゃんの鼻をつまむ仕草。美人画で歯を見せて笑っているのは珍しいかなと思ったが、後で確認したらけっこう見せてたw。


酒井抱一
「風神」
 お馴染み風神雷神の風神さんだけの巻物絵であり、単一の作品として制作されたようだ。とはいえ、雷神もセットで作ったはずなので、「再会が待たれる」とキャプションには記されていた。またどっかで「発見」されるのかな。

 コロコロさん、この絵には両乳ありましたよ!

■風神雷神図屏風:風神雷神の乳首は一つ!・・・の大発見? - コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
本日、小林先生の講演会ですよね。行く予定にしていたのですが、行けなくなってしまいました。細かく見るといろいろ面白そうですね。「品川の月」は、よく再現されているとのこと。と言ってもフリーアを見てないからわかりませんが(笑) チラシの「吉原の花」はなんだかぼけた印象をうけたのですが、現物はいかに?

ラブラブビーム、あれ猪の目から出てる光線らしいです。猪目文
コロコロ
2017/08/06 09:49
>コロコロさん
猪目紋ってなんだろうとググってみました。なるほど。でも若冲や歌麿が描いてたのは孔雀か鳳凰の羽のガラだと思うんですけどね。
少佐
2017/08/06 22:20
若冲、歌麿が何を思ってこの形にしたかは、本人のみぞ知る(笑)

猪の目って、ハート型してる? と思ってましたが、ハートの逆さの形とか、横向きにした状態だとかいろいろ説はあるようですが、ちょっと厳しい(笑)

火焔土器にもハート型が刻まれていて、そのころから猪目紋があると思えなかったのですが、古来から、猪をはじめとした獣の目力には魔除けの力があると信じられていて、神社仏閣にこの紋がよく使われているのだとか。寺に作品を残した若冲は、寺の猪目紋を見て描いた可能性もなきにしもあらず。

お盆で若冲や歌麿が返ってきてるかもしれないので聞いてみますか・・・・ 今度、小林先生の講演の時にでも聞いてみます。
コロコロ
2017/08/08 14:52
> コロコロさん

オーパーツってご存じです? ちょっとオカルト気味にも語られる現象ですけど。
まあただの偶然だとは思いますが、面白いですよね。その時代によって受け取り側のイメージがまったく変わってきてしまう。
そういえば歌麿の絵の中で、おねえさまがケータイみたいなのをよく見てるんですよ。たしか「花」ではまるで自撮りしてるみたいな人がいてw。探してみて下さい。(あれは手鏡らしいですけどね)
少佐
2017/08/09 17:04

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