少佐の記憶-Memoirs of a major-

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zoom RSS 鈴木其一 江戸琳派の旗手(サントリー美術館)

<<   作成日時 : 2016/09/19 21:45   >>

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 これまたいつぶりだろう。サントリー美術館。ピカソにあてられた記憶が蘇ってくる。ぶるぶる。

 鈴木其一を知ったのは、多くの人がそうであるように、酒井抱一のついでである。夏目漱石の『門』に出てくる抱一の作品がなんなのか気になって、琳派の作品展を見に行ったら、ミイラ取りがミイラになったわけだ使い方違いますかそうですか。とにかく不思議な其一ザ・ワールド・ナンバーワン!


《蓮に蛙図》
 初期の作品はそれほどまだ奇天烈でもない。拙い部分も伺える。それでもこれは眼を引かれた。蓮の葉にちいさなカエルくん。それを上からやさしく見守るかのような蓮の花。でも添えられた賛は、蛙の面にションベン?? なんてお下品なこと! なんでも、浄瑠璃の一種である語斎節の中の有名な一節から来ているそうな。

《文読む遊女図》
 フェルメールの頃から手紙を読む女は絵になるものだ。ちょっと遠目から見て、しろい太ももは生足かと期待したら襦袢(?)はいてやんの。琳派は肌の露出はご法度だったろうか?

《群禽図》 双幅 江戸時代後期
 これよ、これやがな、私が其一に惹かれたところは。左右双幅の掛け軸に分けて木の幹と枝とで輪っかを作り、あらゆる種類の小鳥を思い思いの姿で散らし、左中央に謎めいたミミズクを留める。
 アナザーワールドで幻想的な雰囲気はヒエロニムス・ボスかアンリ・ルソーみたい。特に鳥の中で唯一こちらをじっと見つめる知恵の象徴の鳥は、ルソーの描いた「黒い蛇使い」と同じ効果を与えている。ただ、このミミズクさん、よーく視線を見るとやや下側を見ている気もする。ガンつけているわけではないのだな。気弱なのかもしれない。

 そばの解説によれば、この絵は「木菟引き(ずくひき)」をしているところでは?ということだ。「木菟引き」なんて初めて聞いたが、ググるとけっこう出てくる。昼間ミミズクを森に置くと小鳥がホイホイ寄ってくるんだと。それを一網打尽にする、と。俳句の季語にもなっているようだ。
 用例:木菟引きが木菟に引かれる=ミイラ取りがミイラになったみたいな意味みたい。おお、ここで冒頭の前フリが生きたw

《日出五猿図》 弘化5年(1848年)
 五匹の猿で手つなぎサークルを作り、中から初日の出を覗かせる。五の猿で「ごえん」としておめでたいらしい。ダジャレかよ。まあそれも江戸らしいのだが。

《向日葵図》
 以前見たことがあったと思う。すーっと凛々しく高く真っ直ぐに伸びた花の姿はまさに観音さまのような面持ち。宗教性を伺わせる。ただよく見ると正面を向くヒマワリさん、さっきのミミズクと同じように真正面でなく心もち上を向いてる。ひまわりってくらいだから空の方を向くのもあたり前だが。下を向くのもあるけど。観音さまだったらさっきのカエルを見下ろす蓮のように迷える民を見下ろす形が多いだろうが。唯我独尊なのかな。

《花菖蒲に蛾図》
 ここに描かれる花菖蒲は、琳派っぽく象徴的に簡略化はされてなく、西洋画というか図鑑の様に緻密に写実されている。ここのしょうぶと見比べてみて欲しい。当時の園芸ブームから様々な品種がこぞって作られたらしい。それを忠実に描く其一。オランダのチューリップ絵画みたいだね。
 そこに羽に模様もなくただのっぺりと薄青い蛾がふらっと彷徨いこんでくる発想はどこから来るのだろうか??

《朝顔図屏風》 六曲一双
 紺色の朝顔の群生。それだけである。特別幻想的なお膳立てもないし、ミミズクのような超越的なキャラも不在、写実とは程遠い類型的な判で押したような朝顔(ウチでもこんなの咲いてる)と葉っぱと弦のジャングル。今回の呼び物だけどスルーしようかと思ったところ、なぜか足が止まった。なんでこんなに惹きつけられるのか。この六曲一双の屏風の前に立つとなぜこうまで心が落ち着くのか。マーク・ロスコショックに似た感覚に襲われた。
 よく見ると朝顔はそれぞれ微妙に描き分けられてはいる。でも基本的には大きな差はない。これって要するに世の中の人間そのものじゃなかろうか。違うといえば違うけど、どいつもこいつもしょせん大差はない。そしてふと気づくと、ここに描かれた朝顔に、蕾や実(まだ種になってない)はあるが、枯れた花や枯れ葉は描かれていない。人生を描いたとしても、老いや死別みたいなものはここにはない。永遠の青春? とすれば其一は極楽浄土を描いたのか?

(二度目の鑑賞にて追記)
 根もなく、睡蓮や蓮の根が水面下にあるため表に出てこないのと同じく、この朝顔も宙に浮いて咲いているかのようにも見えてきた。そして朝顔の左右の双に風神雷神の影を見る向きもいるようだ。共感はするがそのレベルで想像を広げるとなんでもアリな気もちょっとする。


《富士千鳥筑波白鷺図屏風》
 最後に置かれる二曲一双。富士山と白鷺の群れ。さっきの「群禽図」であれだけ様々な鳥の飛ぶ姿を造形したのに、富士に向かう千鳥の群れはまるでCGのコピペみたいな無個性な群れ。写実もへったくれもあったもんじゃない。
 隣の鷺もハンコでペッタン、ペッタン。飛んでるように見えない。このミニマリズムは画家の行き着く最後の境地なのかな。モダンだね。現代絵画はわからないというが、この延長線上にあるに過ぎない。


*この展覧会について、
東京FM「The Lifestyle MUSEUM Podcast」で
サントリー美術館学芸員の
石田佳也さんのお話が聴ける
Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM_vol.438

 とても興味深い話が聴けた。抱一の一番弟子としてだけの扱いだった其一が最近になってようやく注目を浴び始めているとか。草の合間に虫が隠れてたの? 気付かなかった。展示替えがあるそうなので、これはまた行かねば。
 鈴木其一は63歳でこの世を去っている。死因はコレラとされているそうだ。広重も同じらしい。チャイコフスキーもそうだと言われてるな。


【追記】(その後展示替えにて二度ほど訪問したのでその分の感想)

《風神雷神襖》
 前に富士美術館でじっくり見た。相変わらずよい。他の人の手によるものよりなんかユーモラスな感じ。風邪引いてまんねん。

《桜花返咲扇図扇面》
 秋の熟しすぎた柿の様な紅い枯れ葉の付いた枝分かれの先に、春の桜の蕾と花が数輪開花している。これは想像上の異常事態ではなく、バラ科の花によくある狂い咲きの情景らしい。そんな植物学的なことはともかく、年老いてもワシはまだまだやれるでー!の意思表示とのことだが、あの紅い葉は十二分にエネルギーありまっせ。お花より気になった。

《藤花図》
 こんな青の使い方は初めて見るかも(絵の具が劣化した可能性はあるが)。そしてこんな色の藤は実際にはないかもしれない。この絵はお寺に置かれ、いよいよお迎えの時に仏様が紫色の雲に乗ってやってくるという仏教の教えから来ているらしい。

《四季花鳥図屏風》
 最後にお目見えした大作。其一の集大成作品みたいなこれまでの実験の全部入りみたいな印象。そばに朝顔もあったため、出口付近は大渋滞w。
 これ東京黎明アートルームというところの所蔵らしい。個人の収集家のコレクションを公開してくれてるところみたいだな。その内探索してみよう。











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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
昨日の見どころトークに行ってきました。
ご紹介のラジオ、見どころトークでもピーターバカランさんのことをお話しされていましたが、こちらのラジオの方が詳しかったです。今回、展示替が5回あり、1・3・5期を見ると、すべての作品を見ることができるそうです。全作品制覇をめざそうかと(笑)

朝顔、圧巻でした。私は、よくもここまで違う朝顔を描いたものだなぁと思いながら見ていました。パターンで分けると何種類ぐらいに分けられるのかな・・・・と思いながら。見え方っていろいろですね。
コロコロ
2016/09/20 09:29
コロコロさん
私も其一展全制覇目指します!

> よくもここまで違う朝顔を描いたものだ

ははは、私普段からあんまり人の顔覚えないもんですから、どれも変わりないととらえちゃうんですね。
少佐
2016/09/20 21:18
2回目、行ってきました。《文読む遊女図》の足は生足か? なんだ、肌襦袢か・・  ガレのカトレアは×××だ! 安藤緑山 《竹の子、梅》は見たまま・・・  思っても言わないのが大人。でも頭に浮かんだことは書いちゃう中二病のおじさんとおばさんがここに・・・(笑)
https://tabelog.com/rvwr/000183099/diarydtl/144131/
コロコロ
2016/09/30 14:18
コロコロさん

そうですよねえ、「遊女」って書いてあるんだから、其一確信犯ですよねえ? まったくけしからん! 生足見せろ!(違う)

> ⇒藤の花の房がたわわで直線的。

生足の次はたわわですな(もっと違う)。

> 藤で有名な足利フラワーパーク

何度か行きました。圧巻ですよね。
http://syousanokioku.at.webry.info/201405/article_1.html
少佐
2016/10/01 12:52
昨日、屏風のレクチャーがあったので、またまた行ってきました。
たわわな藤の房の花びらの一部だけ、ほんのりピンクに染まる、赤がさしてあり・・・・ うむ、其一、ここも確信犯だったのか(笑)

草の合間に隠れた虫、自力で探そうとしても、ぜ〜ったにわかりません。ヒントは、《十二ケ月花鳥図扇面》です。展示は10/10まです。
コロコロ
2016/10/03 08:59
コロコロさん
何度もご苦労様です。年会費払ってる会員さんは何度も通えるんでしたっけ? たまに会員証貸してくださいw(すぐバレて出入り禁止になりそう)

たわわで赤…しばらく意味わかりませんでしたが、イヤン(*ノω・*) 展示も多少変わったんですかね。今週末でも再訪しようかな。「日曜美術館」で紹介されたらしいので混んでるかな? でも鈴木其一ファンが増えるのはいいことだ。
少佐
2016/10/03 18:47
会員は、同行者一人もOKなの。私は、今度の2度目のギャラリートークの時に行く予定。見た目がアソコにクリソツのカトレアの生コサージュをつけてその日、入り口のあたりでうろうろしててくれれば、私がそれ、みつけることができたら、ご一緒にいかがですか? ってお声、かけてあげてもいいわよ(笑)
コロコロ
2016/10/04 15:57
コロコロさん

あら? いいんですか? 本気にしますよ。花刺してる人は他にもいそうだからむしろタケノコの方がよろしいのではないでしょうか?なんなら念には念を入れて梅の実も持参します(ぜったいに声掛けられない気がしてきた)。
でも今度のギャラリートークっていつだ? HP見たけどたくさんあってわかりません(;´д`)
少佐
2016/10/04 23:14

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