少佐の記憶-Memoirs of a major-

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zoom RSS ヴァロットン ―冷たい炎の画家(三菱一号館美術館)

<<   作成日時 : 2014/08/10 21:30   >>

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 まっったく知らなかった画家。日本初の回顧展だという。美術系のブロガーさんたちが話題にしてなければまず見に行くことはなかったろう。結果は大正解。思った以上に楽しめた。


 ヴァロットンの何に驚いたかといえば、そのあまりのモダンさである(モダンなんて表現まだ使うのか?w)。

 エドゥアール・マネ 1832年 - 1883年
 トゥルーズ=ロートレック 1864年 - 1901年
 フェリックス・ヴァロットン 1865年 - 1925年
 モーリス・ドニ 1870年 - 1943年
 パブロ・ピカソ 1881年 - 1973年
 アメデオ・モディリアーニ 1884年 - 1920年
 ジュール・パスキン 1885年 - 1930年

 マネを基軸に、他の近代画家と比べてみると(かなりバイアス入ってるがw)ロートレックっぽさはあるものの、ピカソよりも(ドニよりも)歳上の割にピカソより現代的に感じる作風もこなしていた。もうちょっと日本で紹介されててもよかったのにねえ。


《トルコ風呂》 1907年
 とはいえ、最初に出迎えてくれたのは、かのフランス伝統絵画の重鎮アングル師匠の作品に(号泣するほど)心打たれ、自らの作品を捧げたという同名の作品。キャプションを見る前に「お?トルコ風呂がある」と思ったくらいの正統派トルコ風呂。
 アングルトルコが肉肉肉の狂乱であるのに対し、師匠に気を遣ったかヴァロットントルコは人数をスッキリ絞っている。風呂のタイルをすべて青でまとめ、蒸し暑いはずの場面をひんやりとした空気に感じさせる冷たい炎の画家。
 それでもヌードがアングルとはまた別の生々しさ。中央で寝そべっているお姉さんの大きなおっぱいがもう生唾もの。左を向く横顔は金髪のお姉さんと一緒に何を見つめているのだろう。アングルトルコにも動きの方向性はあったが、複数が絡む構成だった。
 その視線の先に、アングルが中央に配置してもっとも存在感のあった後ろ姿の女性にあたる人を、ヴァロットンはひとり左に寄せる。彼女の後ろ姿や髪型、背中に回したタオル(手ぬぐい?)はむしろ浮世絵の中の日本人に見えた。キャプションはその辺に触れていなかったが、進む内にヴァロットンの浮世絵コレクションも出てきたので、当たらずといえども遠からずといったところだろう。

*追記:アングルトルコでは何人か黒人の女性を入れていてよいアクセントになっていた。後ろ向きの女性と同じくヴァロットンはなんかしら自分流にアレンジして入れたりしないのかなとチラッと思っていた。そしたらさっきアプリでヴァロットンの「トルコ風呂」をボケっと見ていたらパツキンのおねえさん黒い犬を抱いていたのね! おっぱいに見惚れてすっかり見落としていたよ。すごいぞヴァロットンマジック!(<お前がバカだ)


《ワルツ》 1893年
 踊る皆さんはスピリッツか。初期ディズニー・アニメ(ファンタジアとかね)で使われそうな表現。背景はモルタル壁の様な仕上げ。同じ装飾系画家としてクリムトの名前が浮かぶ。ヴァロットンはナビ派の異端みたいな位置づけにいたそうだが、クリムトはナビ派の先祖なのかな?(始祖はゴーギャンであるというのが定説のようだけど)関係はちょっとわからなかった。
 右下の女性だけ比較的リアルに描かれている。でもこれもなんか古い日本の田舎のおねえちゃんがもんぺ履いてるみたいだなw。


《室内、棚を探る青い服の女性》 1903年
 小品。空色のネグリジェをまとった女性が夜中に戸棚で探しもの。怖い…。この後姿、ぜっったいに振り返ってほしくない気がする。絵を見てぞっとするのは久しぶりだ。世間では「ボール」(1899年)が注目されているが、ワタシ的にはこっちの方がずっとブルっとするが。


《夕食、ランプの光》 1899年
 これも怖い。食卓を覆う自身の黒い影。継子の女の子の表情もホラー。ペタンとした黒い影が全体を覆うのはやはり浮世絵を参考にしている気がする。ランプの猫ちゃんもね。切り絵みたいだなと思っていたら、会場では気付かなかったが、材質に「板に貼り付けた厚紙」とあるのでそのまんま紙を貼ってたのか!
 ちなみに、ここのテーブルクロスの柄はさっきの「トルコ風呂」の手ぬぐいと同じだと思う(白地に朱色の線の交差)。なんかこだわりのあるデザインなのかな…? もしやと思ったら彼の母国スイスの国旗の反転じゃん!

 この国旗は1889年制定なのでタイムパラドックスもないな。白地に朱色だった時代もあったようだし。
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《秋》 1908年
 マッパでマッチョでワキ毛ボーボーなおねえさんが仁王立ちで口から緑の光線をビー!みたいに見える。ってかまあ、これは現代カメラマンが取りそうな構図である。やっぱり時代を先取りだなあ。

 こんなのね



《貞節なシュザンヌ》 1922年
 なにか企んでいそうな淑女を囲む二人のハゲオヤジ。頭のてっぺんに一本毛が生えていたら波平さんか加トちゃんである。それにしてもいいテカりっぷり。禿頭は形的にも男根や亀頭を連想させ精力絶倫の象徴にも使われることが多い。でもシュザンヌは負けない。手玉に取る(だろう)。左の唇の上の黒い点はほくろかと思ったら、おやじの眉毛だったのね。これあるとなしとではシュザンヌの顔つきが随分変わる。計算のウチだったんだろうか。
 聖書(ダニエル書)素材らしい。秘めた意味合いもさることながら、ボックス席のピンクの枠が色といい線の引き方といいクールだ。ネオンサインみたい(神話の背景からバスタブの見立というのが定説みたい)。1922年だと(それほど一般的かどうかはわからないが)すでに開発されていたようだ。
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《引き裂かれるオルフェウス》 1914年
 おっぱいプルンプルンさせたハダカの女性たちに寄ってたかって引き裂かれるオルフェウス=ヴァロットン。女性へのコンプレックスを投影しているのではという話だが(私も身につまされるぞ)、責め苦というよりMっ気のある男ならむしろご褒美のような…。彼女らの表情に憎しみも見えないし、オルフェウスの体に流血もほとんどない。あんまり痛そうに悲惨そうに見えないのよね(やっぱり私も身につまされるぞ…?)。
 女性たちの髪の色をひとりひとり変え、背景の山々の遠近法はちょっと東洋風…かな。そうした装飾性が寄ってたかってのリンチをソフトなものにトーンダウンさせている。


《龍を退治するペルセウス》 1910年
 画中のペルセウスがクラーク・ゲーブルに見えるのだが、あの人は1901年生まれらしいから、ヴァロットンが彼の似顔絵を描いたというわけではなさそうだ。それにしても芝居がかったおばさんアンドロメダ姫といい、ハリウッドのB級映画の一幕のような茶番劇っぽく見える。

 あえて「スターウォーズ」を例に出すけどこんなのね。ダッサいわ〜w(カタカナが入ってるからポスター制作は日本みたいだけど)
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 竜じゃなくてワニじゃん、というのは誰しもツッコむところだが、中世くらいの物語画に出てくる竜はちょうどこんな感じではなかったか。新しいような古いようなちょっとしたタイムパラドックスを体感できる不思議な作品に感じた。
 そうした変なものに目を取られがちだが、空の装飾はナビ派の端くれの真骨頂で見事であるからお見逃しなく。


 面白かった。いやはや世界にはまだまだ隠れた巨匠がいるものだ。しかし美術館地下の入口でこんなのが誘ってるのはちと風紀上問題では無いのか!? けしからんもっとやれ!w (注:実際にこのポーズは取れないみたい。真似すると腰が折れますw)
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 あと帰ってきてから知ったものに、「ヴァロットン展 音声ガイドアプリ」というものがある。普段会場で音声ガイドを借りることはないのだが、こいつはいくつか作品精細画像も手に入るし画集より手軽でよかった。もちろん会期終了してからも保有できる(はず)。


 三菱一号館美術館はいつきてもバラが咲いてるね。
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