少佐の記憶-Memoirs of a major-

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zoom RSS メアリー・カサット展(横浜美術館)

<<   作成日時 : 2016/07/02 22:18   >>

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 知名度は低いだろうなあ。米国に欧州の印象派絵画を紹介した(自らも印象派の)女流画家として、絵画史的に重要な位置を占める人だけれど、よっぽどの絵画ファンでないとピンと来ないと思う。かくいう私だって、数年前ここであった中野京子先生のご講演で知ったのだ。


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 日曜の午後なのに、横浜美術館はやっぱり快適に空いていた。


《バルコニーにて》 1873年
 最初に評判をとった作品らしい。カサットは女性であることを理由に美術学校へ通えず(アメリカでは美術学校に行けてたらしい)、ヨーロッパの美術館で巨匠の絵を模写して独学で画業を学んだそうだ。「ふんっ、絵はガッコなんか通わなくても自分で過去の大センパイからいくらでも勉強できるのよ!」
 バルコニーに並ぶ男女。だが男の姿は影に埋もれさせ、ほぼ自己投影画と思われるスペイン女のなんだか得意満面に見える横顔にスポットライトを当てて私が主役よと言わしている(定かではないがそんな逸話を聞くとそんな風に思えてくる)。
 画風にはムリーリョの影響があるという。だれ?と思ってググると、17世紀バロック期のスペイン画家なのか。それからするとこれは当時のスペインの実際の人々を描いたのだろうか。空想上の、それも誰かの絵をもとにした絵なんだろうか。はたまたカサットの夢?


《桟敷席にて》 1878年
 これは京子先生の本で紹介されていた。この評論傑作よ(まだブログに記事書いてないけど)。




 桟敷席の女性を遠眼鏡で覗く離れた席のエロオヤジ。美術館側で付けられたキャプションでは「見られていることを気にも留めず、まっすぐ舞台を見つめる、自立した主体的な近代女性の姿」となっていたが、いやいや明らかに見られている事をこの女は意識している。

 そうそう、この絵を見ていたらヴァロットンの《貞節なシュザンヌ》1922年を思い出したんだよ。
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《眠たい子どもを沐浴させる母親》 1880年
 赤ちゃんの足が妙に長いな。イタリア絵画とかからの影響とのことなのでマニエリスムしてあるのかも。それよか注目は赤ちゃんの表情である。
 赤ちゃんって、おむつ交換とか、親に何かしてもらってる時は「余は満足じゃ」みたいなこれ以上ない悪魔的かつ不遜な表情をするよね。この絵でもそんな感じだ。必ずしもあかんぼは天使なんかじゃないのを知っている母親ならではの目線からだと思う。といいながら独身を通したカサットに子供はいなかったと思うのだが。日頃からの観察眼なんだろうか。あるいはこれもカサットの夢?


《手紙》 1890-91年
 緑でまとめた版画。ペイズリーの服の柄や壁紙の模様がとても美しい。浮世絵の影響の強い作品だどか。女の人は悲しい手紙を読んでハンカチ噛んでよよよと泣いているのかと思ったら、よく見たら封筒ののりの部分をペロリと舐めているところだったのね。


エヴァ・ゴンザレス
《画家の妹ジャンヌ・ゴンザレスの肖像》 1869-70年頃
 女流印象派画家繋がりでベルト・モリゾと共に展示されていた人。名前はゴツいがカサットやモリゾなんかより写実の腕は確かではないかと。マネに師事したらしく、ペタンとした表現や黒の使い方にその辺が忍ばれるが、妹を描いた清楚な空気感は彼女独特のものだろう。早世してしまったのが惜しい。


《クロシェ編みのお稽古》 1913年
 最後に飾られる作品。一番気に入ったかも。ドガと同じく晩年に目の衰えのせいで選んだパステルという画材で制作された。この人にはとても合っているような気がする。
 この企画展でカサットの母子像はさんざ見てきたが、この作品では子供が随分と大きくなっている。小学校高学年くらいの女の子。クロシェ編みがなんだか私は知らないが、お母さんはほぼ娘と二人羽織で一体化している。母と娘は特別な絆で結ばれているとよく言われる。娘の中に若い自分を見るのだろうか。自分のクローンを作るかのように自分の出来るお稽古事を娘に継承していくのも世の常。子供の年齢の割には若いこのお母さんの後ろには描かれていないがカサットが更にいるはずだ。自分はそうならなかた母子像を繰り返し描いた、やはり全てはカサットの夢なのか。


 そういえばなんか物足りないなと思ったら、一枚もヌードがなかった気がする。赤ちゃんも含めて描かれた人物は全て服を着ていたのでは。もともと印象派はヌードを描かなかったかな。いやそうでもないか、ルノアールはいうまでもなく、マネはAVまがいの《草上の昼食》で衝撃を与えた。モネにはないかも。











僕と傘と日曜日
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2014-12-03


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コメント(16件)

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はじめまして
《桟敷席にて》の女性。
>いやいや明らかに見られている事をこの女は意識している。

私もそう思いました。
やっと同じことを感じられた方をみつけました!(笑)


そして、一連の絵についても、どういうシチュエーションで
描かれたのかなぁ・・・・と思うことがいくつも。
観察によるのか、理想を描いたのか。
はたまた・・・・ といろいろ考えさせられました。
コロコロ
2016/07/13 12:38
コロコロさん
いらっしゃいませ(笑)
そうですよね、「ふんっ、あのハゲオヤジ見てんじゃねーよ」って思ってますよね?(そこまでスレてない?)
ま、これが正解か画家本人も含めて誰もわかりません。好きに解釈すればいいと思います。それが絵を見る楽しみですよ。
少佐
2016/07/13 22:15
見られていることを意識しているというのは、そちらの方向だったのですね。私は、「気にしてませんよ〜」と言いながら、華やかないでたちの人たちの中で黒をあえて着て、返って目立つて見られる。ということを無意識の意識の中で、計算しているでしょ・・・でした(笑)

まあ、好きに解釈して楽しむということで・・・・

中野先生のご著書では、桟敷席の女性がどのように語られているのか、ちょっと気になっております。
コロコロ
2016/07/14 11:37
コロコロさん
おー!そういう解釈でしたか。すいません、私自身が(ハゲてはいませんが)オヤジなんで、自己投影してしまいました。
誰でも、解釈は要するに絵の中に自分を見るものなんですね。画家自身でさえもそうです。

中野先生のお話は…読んで頂くのがベストですが、拾い読みしてみると、まず全身黒の服は当時のパリの流行だったみたいです。マネもそんな女性描いてますね。
そして劇場の桟敷席は、あくまで「社交の場」として利用されていたようです。劇なんか誰も見ちゃいなかったとか。だからオペラとかめちゃ長いんですかね? ゆっくりお相手が探せるようにと。
(これらは解釈でなく歴史的事実だと思います)
少佐
2016/07/14 14:37
絵の中に自分を見る。そのとおりです(笑) 同級生が医者も参加するコンパで、終始不機嫌。なんだあいつは・・・と、思われていたのに、逆にその不機嫌さが気になった医者と結婚に至った。というエピソードが風の噂で流れていました。本人は意識的だったのかはわかりませんが、ちやほやされることに慣れた医師には新鮮だったのかもしれません。愛想を振りまくだけじゃダメなのねと話していたことが重なったかも(笑) 女性の中にそういう本能的なところがある気がして、それをカサットは描いたのかなと(笑)
http://tabelog.com/rvwr/000183099/diarydtl/141998/

中野先生のご本、図書館で予約したので読んでみます。
コロコロ
2016/07/15 09:59
コロコロさん
ブログのご招待ありがとうございました! 食べログに自分のブログスペース持てるんですね(感心するのはそこじゃない)
夜間鑑賞会、私も行けばよかった。詳細な分析、興味深く読ませて頂きました。同じ絵でも他の方がどう見ているかはやっぱり気になります。また寄らせてもらいます。
ハングリータイガーは私も好きで前はよく行ってたんですが、しばらくご無沙汰です〜。
少佐
2016/07/16 14:41
食べログ日記、当初は、食べログらしいネタを書いていたのですが、http://tabelog.com/rvwr/000183099/diarydtl/134220/ 気づけば、美術館探訪記録に・・・・(笑) 

そんなわけで少佐さんのコーヒーネタとか、科学ネタとか興味深く拝見させていただきました。食べログの方も、ご覧いただいたようでありがとうございます。ハングリータイガーはソウルフードですよね。(笑)
コロコロ
2016/07/17 20:34
コロコロさん
ハングリータイガーはもう10年以上行ってないかも。今度横浜美術館に行くことがあれば無理矢理でも寄ってみようかな。
コロコロさんは神奈川、横浜方面でご活躍のようですが、小田原の「木の実」はご存知でしたかね?
http://syousanokioku.at.webry.info/201312/article_15.html
ご存じなかったら行ってみて欲しいなあ。私のお気に入りなんです。これまたご無沙汰中なもので。
少佐
2016/07/17 22:55
中野先生のご本、つまみ読みで読んでます。当初、私は夜公演に昼のカッコをして目立とうとしたのだと思っていたら、この絵は、昼公演だったようです。回りの女性も黒い衣装でした。

この絵の解説によって、当時、劇場は社交の場ということを知ったわけですが、その実態は、漏れ聞こえる以上のもの(笑) 良い感じになったら、カーテンしめて中でチョメチョメ。オペラはBGM(笑) 

バレエに関しても、オペラの添え物。踊り子は売春婦。高尚な演目かに思っていたバレエ。プリマの孤独。気位の高さ、鼻っぱしの強さ。ゆとりのあるお嬢様たちの習い事だと思っていたのに。どこで、そのようなステータスを得たのか・・・ 今は、過去のことなどまるでなかったかのように。

観劇も、昔は社交場だった。見ている人、そんなことは知らなかったと思うのです。なのに、この絵を見て、解説を見たら、さも、これまで知ってたかのように語り出す。そんな視線で見てしまいました。

安野光男さんが、ニュースを見て、これまで聞いたことのなかった言葉なのに、「ライフライン」や「バブルがはじける」と連日叫ばれるとみんなが、さも知っていたかのように使い出すと言われているのと同じだなぁ・・・と。

参考になる書籍をご紹介いただきありがとうございました。
コロコロ
2016/07/28 15:54
コロコロさん
中野先生の本読んで頂けましたか。最初に読んだのはやはり『怖い絵』
http://syousanokioku.at.webry.info/200807/article_12.html
いきなり「ドガの踊り子は商売女だった!」みたいな衝撃の舞台暴露話で、恐怖に慄きました。あの本を読む前と後ではそれまで見ていた見慣れた有名絵画がまったく違って見えてくるし、それ以降絵を見る(語る)楽しみも随分(妄想入って)変わりましたね。

『怖い絵』シリーズは月末に新作が出るようで、そちらもどうぞ!
https://t.co/RnXvVhbku3 ←(安心して下さい、アフィリリンクです!)

> カーテンしめて中でチョメチョメ。オペラはBGM(笑)

だから向こうのオペラとかめちゃ長いんですかね? ゆっくり楽しめるように…(*ノω・*)

> どこで、そのようなステータスを得たのか・・・

今「ハイソで高尚なゲージツ」とされている西洋文化って、永らく関係者があの手この手で神棚に上げたものなんですよ。そのへんは(音楽についてですが)
『反音楽史 さらば、ベートーヴェン』(石井 宏)
http://syousanokioku.at.webry.info/200503/article_1.html
に詳しいです。
少佐
2016/07/28 21:27
3連投目は、はじかれたみたいでした。嵐状態になってすみません(笑)
《桟敷式にて》 中野先生の本を読んで、さらなる妄想が・・・
女性のオペラグラスの方向、舞台の高さとは明らかに違いますよね。
「私は舞台を見る」の意志表示でなく、「私も、男を見る」なのかな?とか・・・・

あの腕の血筋ばった血管はなに?とか・・・(笑)始めて見てから、いろいろ見方が変化しています。
http://tabelog.com/rvwr/000183099/diarydtl/142231/
コロコロ
2016/07/29 23:22
コロコロさん
はじかれた? 一気に連投するとスパムコメントに判定されるんですかね? 一時酷かった時もあったからかな。

なるほど、あの手首はややキモいですね。現物見てる時には気付かなかった。うーん、でも白人の女性はもしやあんなのが普通なのかもしれませんね。

コロコロさんのブログの他の記事を見ていて、ガレのエロさには共感しました。少なくともなんか、生きてますよねあの草花。

で、誰も突っ込まないけどこれはアレだろ?って思い出したのが 安藤緑山 《竹の子、梅》http://syousanokioku.at.webry.info/201407/article_1.html でした。どんな作品かはググるとすぐ出ると思います。あれは見たまんまだと思うんだけどw
少佐
2016/07/30 23:29
ガレ、やっぱりそうですよね。
そして、竹の子も、うふふふ・・・ やっぱりそう思います(笑)

あの手について、先日、また友人と話していたのですが、どう見ても手袋をしているようには見えない。でも血管にしては、描写がひどすぎ。と話していたら、当時の手袋は本当にうす〜い素材で、技術がまだ未熟だから、縫い目があんふうに、ボコボコになるんだそう。アンティークが好きで、そういう手袋をいくつも見てきたからと。

しかし、左手は手袋しているようには見えない。と反論(笑)はずしているのか、ほんとうに薄い素材なのでしているようには見えないのかも・・・・と。

自分が知っていること、見てきた経験が、鑑賞に大きく影響するものですね。
コロコロ
2016/08/02 11:27
コロコロさん

> 竹の子も、うふふふ・・・

そうでしょ?! 初めて(普通の大人ならあまりにバカバカしくてそう思っても敢えていわない)同じことを感じられた方をみつけました!(笑)
(私、頭が小学生なんで許してください…)
少佐
2016/08/03 21:37
中野先生の『印象派を近代で読む』 全部読まずに返してしまったのですが、友人にこの本、いいよ・・・と紹介したら大絶賛。再度借りて読んだら、当時の母親は、「授乳なんて滑稽で不愉快な肉体労働で下層階級の仕事」と思っていたと。これまた怖い! しかも抱きもせずただ見つめるだけ。それが仕事。

他にも歴史に疎い私でも、わかりやすい説明に思わず買ってしまいました。そういえば、中野先生の怖い絵の展覧会の開催が決定したそうです。2017年7月〜9月「兵庫県立美術館」、10月からは東京の上野の森美術館だそうです。カサットの絵を改めて怖い絵として紹介したら、反応はいかに?!

この情報も、いつもは大したニュースリリースされないのですが、あらたに入れたgoogoleのマッチングニュースで知りました。ありがたいやら、怖いやら・・・  若冲とか、禅寺で修行しながらプログラミングなんてニュースがピックアップされています。
コロコロ
2016/10/05 12:11
コロコロさん

おっぱいネタ続きますねw(違う) 京子先生の本いいでしょ? 二度ほどご講演にも寄らせてもらいましたけど怖いというよりか笑かしてもらう方が多かったですw
サインももらっちったし!
http://syousanokioku.at.webry.info/201210/article_1.html

「怖い絵展」は詳細決まったんですかね? 以前HP行ったら Coming Sooooon! みたいな画面しかなかったので。
少佐
2016/10/05 22:19

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